集合住宅と日本人―新たな「共同性」を求めて



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集合住宅と日本人―新たな「共同性」を求めて
集合住宅と日本人―新たな「共同性」を求めて

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なぜ城郭にこだわる?

本書は建築専門家や自治体などが、ともすれば安易に唱和する、近隣の相互交流としての「コミュニティ」を批判し、「現代社会という一生涯出会うことのない多くの他者と築くべき共同性」を提唱する。
確かにコミュニティさえしっかりしておれば何とかなる、といった精神主義的な議論が散見されることは事実だし、時には建築設計者がプライバシーを半ば否定するかのごとく強引な仕掛けをおこない、それが住民から拒絶されるような、独りよがりもあるかもしれない。
その意味で曖昧模糊とした「コミュニティ」から、より強制力や制限に軸足をおいた「ガバナンス」へと共同性のありかたを変えるべきではないか、という議論には賛同できる部分もある。
しかし、わかりにくいのは「コミュニティ」が「空気」として少数者の排除に転じる可能性を指摘しながら、新たな共同性を導入する重要な契機として「保安」をあげている点だ。
著者は「過防備」を問う声に対する反論として、「たしかに『体感治安』が過剰になっている部分があるかもしれないが、『安心』は依存心、あるいは慢心へつながる。(中略)人々の『自立』を妨げる意味において深刻であろう」と述べるが、「犯罪不安社会」(浜井浩一)などが指摘する根拠なき体感治安を前提とし、絶え間ない警戒と相互監視を行ってまで得なければならない「自立」とは一体何なのだろうという気がする。
後半では中世ヨーロッパや中国と比較し、「日本に城郭がないのは四方が海という自然の城郭に囲まれているから」などという陳腐な日本人論が展開される。どうやら著者は城郭が象徴する保安意識こそ近代人の自治=自立に必須な要素として認識しているようなのだが、そもそも近代化とは城郭の向こう側にいる他者と語り合える共通の基盤を構築することだろう。著者は建築設計者がなぜ「オープン」な空間に価値をおくのか理解できない、というが、建築を含めてモダニズムの掲げる主要な価値の一つに「オープネス」があるのは至極当然ではなかろうか。



平凡社
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